第1章 残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法

グローバルな能力主義の時代を生き抜く方法として「自己啓発」がブームになっています。
「仕事を獲得するため、AIに仕事を代替されないために、休日も頑張ってスキルを磨こう!」そんな自己啓発本が書店にあふれています。
しかし誰もが感じているように、自己啓発というものは少し『うさんくさい』ですよね。
「本当に自分は変われるのか?本当に自分の能力は向上するのか?」という疑いを捨て去ることができません。
本書のテーマは『自己啓発に異議を唱えること』です。
自己啓発の伝道師たちは「やればできる!」と私たちを鼓舞します。しかしこの本にはそんな主張と真っ向から対立する主張、すなわち「能力は開発できない」と主張しているのです。
なぜならば努力しても私たちは変われないからです。
とはいってもこれは橘玲さんが勝手に自分の意見を言っている訳ではありません。自己啓発が意味がないことを『進化論』の観点から説明しているのです。
なぜ自分の能力が開発できず、自己啓発しても意味がないかという説明は第2章と第3章でするとして、まずはこの本の結論である「自己啓発は意味がない。自分は変われない」ということを押さえておきましょう。
「努力しても無駄なら何を希望に生きていけばいいんだ…」
大丈夫、絶望することありません。今のあなたでも、成功を手にする方法があります。
残酷な世界で生き延びるための成功哲学は、たったの2つだけです。
- 伽藍を捨ててバザールに向かえ。
- 恐竜のしっぽの中に頭を隠せ。
分かりやすく言い換えると、以下の通りです。
- 今の世の中は頭のいい人が医者や弁護士などの高収入の仕事を独占しているのだから、みんな自己啓発をして自分の能力を高めて高収入の仕事に就こうと頑張るけども、自分の能力は遺伝で決まるから、努力しても自分は変えられない。
- つまり高収入の仕事には就けず、コンビニのアルバイトのような誰にもできる単調な仕事に就かざるを得ない。
- それが嫌ならば自分の好きなことで生きていくしかない。
- 今ではアマゾンやグーグルなどのプラットフォームを使えば、工夫次第では自分の好きなことで生きていける。
- そんな道をなんとか探そう。
今の世の中は人間の様々な能力の中で、「言葉を操る能力が高い人」と「数字を操る能力が高い人」の2つだけを評価します。
この2つの能力が高いと勉強ができるとされ、高学歴になって高収入の仕事に就く、そんな世の中です。
だからみんなが自己啓発をして勉強を頑張って良い仕事に就こうとするのですが、かなりの部分が才能や環境で決まっているため、個人の努力ではどうにもならないことが多いです。
勉強できない人は高収入の仕事を諦めて、コンビニなど誰にでもできる仕事で働くしかありません。それが嫌ならば、自分の好きなことで生きていくしかないのです。
そして今は昔に比べてグーグルやアマゾンがあるので、自分の好きなことできていく方法は見つけやすのです。
例えば音楽を例に取りましょう。音楽が好きならばメジャーデビューすることは難しいけれども、 youtubeで自分の音楽を配信して少数のファンを持って、CDを自主制作してアマゾンで月20万円とか生きていくのに必要最低限のお金ぐらいならば、何とか工夫次第で手に入るのです。
メジャーデビューできる人なんてほんの一部で、それ以外の人は基本的に音楽で食えないわけです。
しかし今の時代グーグルアマゾン、SNSがあるから、それらを上手に使えばメジャーデビューは無理でもギリギリ生活できるぐらいは稼げるよという話です。
漫画家や小説もこれ同じです。ジャンプに連載できるような漫画家は一部だけれども、twitter、pixiv 、youtubeで自分の書いたオリジナルの漫画を公開できるのです。すごい人気はでなくても少しでもファンがつけば、生きていくのに必要なお金ぐらいは何とかなります。
このように「自己啓発には意味がない」、もうちょっと厳密に言うと「適性がない能力は学習や訓練では向上しない」という事実を認めて、その上で「どのように生きていけばいいのか」という成功哲学を作っていくべきなのです。
第1章まとめ
- 自分の能力の大半は遺伝だから、努力しても自分は変えられない。
- つまり能力に恵まれなかった人は高収入の仕事は無理で、単調な仕事に就かざるを得ない。
- それが嫌ならば自分の好きなことで生きていくしかない。
- 今ではアマゾンやグーグルなどのプラットフォームを使えば、工夫次第では自分の好きなことで生きていける。
- そんな道をなんとか探そう。
第2章 能力は向上するのか?

なぜ自己啓発が意味がないのかを見ていきましょう。
その理由は以下の2つです。
- 知能の70%は遺伝で決まり、知能だけでなくほとんどの能力も遺伝の影響を受ける。
- 性格の半分は環境の影響を受けるが親の子育ては無関係で、一旦獲得した性格は変わらない。
この他にも本書には「能力は向上しない」というあらゆるデータが書かれているので、興味がある人はぜひ手に取ってみてください。
これら2つのことは行動経済学という学問によって、証拠が山積みになっていて否定することはできません。
行動経済学は「遺伝的な影響を、教育で変えることができない」という大量のデータを積み上げています。シンプルに言うと行動経済学は次のように主張します。
適性に欠けた能力は、学習や訓練では向上しない。やれば出来ることはあるかもしれないが、出来ないことの方がずっと多い。
これは多くの人が主張していることで、有名なところだとリチャード・ドーキンスの『利己的な遺伝子』、スティーブン・ピンカーの『人間の本性を考える』といった本でも主張されていることです。
つまり知能や性格は運命のようなもので、努力によって変わらないのです。
もし私たちの人生が「やればできる!」という仮説に従っているなら、この仮説が否定されてしまえば人生そのものが台無しになってしまいます。
それよりも「やってもできない!」という科学的な事実を認めて、その上でどのように生きていくかを考えるべきなのです。
第2章まとめ
- 知能の70%は遺伝で決まる。知能だけでなくほとんどの能力も遺伝の影響を受ける。
- 性格の半分は環境の影響を受けるが親の子育てとは無関係で、一旦獲得した性格は変わらない。
第3章 考察

本書では「適性に欠けた能力は向上しない」と言っているのですが、一番難しいのは自分が向いているかの適性を判断することではないでしょうか?
適性があれば努力すれば伸びるので、勉強に向いている頭があるならば勉強すれば成績は上がりますが、勉強に向いていない頭だったら勉強したって大して成績は上がりません。
でも自分が勉強に向いているかどうか、どうやって分かるのでしょう?
またミュージシャンが自分の音楽の適性があるか、どうかってどうやって判断するのでしょうか?サッカーでも漫画家でも何でもそうです。自分には才能があるといつ判断すればいいのかが難しいです。
自分に才能があると思い続けて、10〜20年も真面目にやっても売れないことがあるわけです。逆に3年間だけ頑張って才能がないと思って辞めてしまったが、本当は才能があってあと1年続けていたら売れていた可能性もあるわけです。
つまり言いたいことは「諦めるポイント」が難しいことです。
クリエイターならば特にいつ売れるかわからりません。「才能がある」と信じて続けたが一生売れないこともあるし、逆に才能があっても「才能がない」と判断して途中で辞めてしまうこともあります。
どのポイントで「自分には才能がない」と今やっている活動を諦めるかが難しいです。
なぜなら人間は「自分には才能がないんだ」と認めたくない生き物だからです。
「現状維持バイアス」といって現状維持しようとする本能を持っています。その結果ずるずると今の活動を引き伸ばして、一生売れないお笑い芸人のようになってしまうのです。
これに対しての解決策は「自分で一定の期間を決めて頑張る。その期間で結果が出なければ、その活動は才能が無かったとして諦める」です。
『自分は音楽で食って行きたいが、才能があるかどうか分からない。じゃあ5年間死ぬ気で頑張って、この5年間で売れなかったら普通に働こう。』こんな考え方もあります。
ぜひ自分なりの才能の見つけ方を探してみて下さい。
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