東京上空に突如出現した『巨大顔アート』から、伊藤潤二の名作『首吊り気球』をご紹介!

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人面気球の謎

東京上空に出現した人面気球が話題ですが、この気球は現代アートチーム目『mé』の「まさゆめ」という作品です。

この気球を見て、伊藤潤二の名作ホラー漫画『首吊り気球』を思い出した人も多いのではないでしょうか?

そこで今回は、伊藤潤二『首吊り気球』を知らない人のために、首吊り気球をWEB小説風にご紹介します。

首吊り気球

ああ夢なら早く覚めてほしい。

家の中にこうして閉じこもって、もう一週間になる。

食料もすでに尽きてしまった…。

しかし私は、一歩も外へ出ることができないのだ。

もし出れば、たちまちあいつに…。

「和子!!いい加減にこの窓開けなさいよね!」

「ねぇ、お腹すいたでしょ?出てきてなにか食べないと死んじゃうわよ」

窓の外から私に呼びかける声が聞こえる。

でもその手には乗らない。

窓を開ければ、確実に死んでしまう…。

なんて恐ろしいんだろう。2階の窓を叩くのは間違いなく私の声だ。

私の声が外から私を呼んだいるのだ。

幻聴ではない。

あれは確かに今、私の声で話しているのだ。

どうして、こんなことになってしまったのだろう。

もともとのきっかけは今から1ヶ月ほど前、藤野照美の死がきっかけだった。

彼女の死は衝撃的だった。

彼女は自分のマンションの部屋の窓から身を乗り出して、電線にロープを巻き付けて自殺したのだ。

藤野照実は大人気アイドルタレントであると同時に、私のクラスメイトであり、親友だった。

照美の死んだ後、後追い自殺をする若者がたくさん出た。

そのほとんどは首吊り自殺だったという。

またファンの集団的な失踪事件も起きていて、彼らもどこかで首を吊っているのではないかと言われていた。

さらに照美の幽霊の噂が広まった。

その幽霊とは、照美の顔だけが気球のように夜空に漂っているというものだ。

専門家に言わせれば、アイドルを失った悲しみから不安定な精神状態に陥り、集団的な幻影を見たということで、説明できるらしい。

その後、幽霊の目撃者の撮った写真が公表されると、そのあまりの異様さに私たちはゾッとした。

その写真には、夜空に浮かび上がった気球のように大きな輝美の顔が写されていた。

そして首の部分は胴体からちぎれたになっていた。

私たちの学校はこの話で持ちきりになった。

照美と付き合っていた白石くんと学校の廊下で会ったとき、

「白石くん、なんだか大変な騒ぎになっちゃったわね。みんな無責任なことを言ってるわ。白石くんは幽霊なんて信じてないでしょ?」

と聞くと、彼はこう答えた。

「いや信じるも何も、僕自身この目で見てるんだ」

私は彼も悩んでいるのかと思っていたが、ある晩彼から電話があった。

「今、永正寺の前から電話している!今すぐ来られないか?照美が現れたんだ!今くれば君も見られるはずだ」

私は急いで家を出たが、永正寺に向かう途中、幽霊なんかいるはずないし、からかわれたんじゃないかとも思った。

永正寺に着くと、白石くんが木の上に登って「照美!」叫んでいた。

白石くんは夜空に浮かぶ照美の顔に向かって叫んでいたのだ。

次の瞬間、巨大な顔がもう一つ現れた。

白石くんの顔だ。

そして、白石くんの顔から垂れ下がったワイヤーロープが、白石くんの首を吊ったのだ。

その後に繰り広げられた光景は、あまりに奇怪だった。

激しく接吻する2つの顔の下で、白石くんの体はマリオネットのように踊っていた。

すぐに交番に警察を呼びに行き戻ったが、2つの顔はなくなっていた。

警察に事情を話しても、信じてくれる訳もなかった。

翌朝、通学中に友達に話したが、誰も信じてくれない。

突然、空から何かが近づいてきた。

それは私と友達の顔の形をした気球だった。

「いやあああ!」

友達は気球から伸びたロープに首を吊られ、上空へと飛び立ってしまった。

私は死にものぐるいで走り、家の中に逃げ込むことができた。

「一体これらの物体はどこから飛来したのでしょうか!?今や日本中がこの奇妙な気球に襲われているのです。上空にはすでに気球に吊り上げられた犠牲者も多く見られます。」

テレビでは、上空を埋め尽くす気球とそれに吊られた人たちの映像が流れていた。

あれから何日たっただろう。

家には私一人だ。

父は「仕事に行く」と言って家を出たところを、私達家族の前で首をつられた。

母は3日前に自分から外に出て、首を吊られた。

弟は「食料を探しに行く」と言って家を出てから、帰ってこない。

きっと弟もどこかで首を吊られたのだろう。

「ねえ和子開けなさいよー、外は清々しい天気よ」

「もうあなたくらいなものよ。未だに意地はってるのは」

外からは私そっくりの気球が私の声で喋りかけてくる。

頭が変になりそう。

誰か、誰か助けて。

突然、窓を叩く音とともに、弟の声がした!

「おい姉貴いるのか!早く口を開けてくれ食料を持ってきた!早くしないと俺の顔が飛んでくる!今まで必死で逃げ回っていたんだ!遅くなってすまん!」

あぁ弟の洋介が帰ってきた!

「洋介、無事だったのね!今開けるわ!」

窓を開けると、そこにいたのはマリオネットのように気球に吊られた弟だった。

そして弟の顔をした気球が言った。

「姉貴…開けてくれて…ありがとう…」

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